三重の1番打者・梶田蓮には出塁することともうひとつ、大事な仕事があった。
相手ピッチャーのボールの印象を話し、基本的な攻略法を指示するのだ。

「……なんとなく、わかるんです」

準決勝の大阪桐蔭戦の先発は、柿木蓮だった。
梶田は最初の打席で、4球目を打ち一塁ゴロに倒れた。
ベンチに戻るなりみんなにこう伝えた。

「球はそんなに走ってない。球質も軽いから、どんどん振っていけ」

大阪桐蔭は5回から根尾昂にスイッチ。
最初の対戦で、いきなり二塁打を放った梶田だったが、印象は柿木のときと正反対だった。

「スライダーがものすごく切れていた。あのスライダーをしっかり見極めないと、なかなか打てないと思いました」