『分かったわよ。別に、別府とデートしたいわけじゃないけど、そんな変なあだ名付けら
れるくらいだったら、アスレチックデートでも何でもするわよ。別府のそれでいいのよね?』
 まるで挑戦状を叩きつけたかのような視線で二人をにらみ付けると、友子はいかにも上
機嫌に、別府は困惑を隠しきれない表情でうなずいた。
「あ、ああ。椎水さえ良ければ俺は……それでいいよ」
 別府の答えに、友子とつむぎちゃんが囃し立てる。
『やったねかなみん。あんたも人生初デートじゃん』
『おーっ!!もしかしたら、これをキッカケに二人に恋が芽生えるなんてことも――』
『それはないっ!!』
 とっさにあたしは、別府のことも省みずに全否定してしまった。ちょっと後悔の念が頭
を掠めたが、ここで変に曖昧な態度を取れば、彼女達の前じゃ絶対気があると思われてし
まう。むしろ、正直を言えば、ちょっと気になる存在ではあるのだが、まだ好きかどうか
の判別にまで至っていないのに既成事実化されるのは困るし、別府だって困るだろう。
『ま、まあ、その……そういうわけだから、その……よろしく。でもその、あくまで、雨
女じゃないってことを証明するため、だけなんだからね。そうじゃなかったらこんなこと……
あり得ないんだから』
 恥ずかしくってつい分かりきった断りを入れてしまう。
「分かってるよ。でもさ。どうせ行くなら楽しもうぜ。ま、俺も体動かすのは好きだし」
 別府の前向きな言葉に救われる思いであたしはうなずいた。
『うん…… まあ、せっかく行くなら……そうよね。楽しまないとね……』
『初々しいすなあ。もう……見てるこっちが痒くなっちゃう』
 無理矢理見合いさせられたようなあたし達を、つむぎちゃんがそっと茶化したが、その
声はあたしには届いていなかった。


もしかしたらデート編に続くかもしれないという