「分かったよ。全く……会長に幻滅とか言われると、結構堪えるんだよな」
 ブツブツ文句を言いつつ、彼は私の隣に腰を下ろす。そして二人でしばらく無言で海
を見つめていた。時折別府君が私の顔にチラチラと視線を寄越すのを感じる。何となく、
何かを言うのをためらっているような、そんな感じだ。
『……何?』
「えっ!?」
 ついに耐え切れずに、私の方から問い質してしまう。別府君は驚いたような顔を見せ
たが、すぐに視線を逸らして頭を掻いた。
「えーと……その…… ご、ごめん。気になった、よな?」
 咎められたのかと思ったのか、彼の口から謝罪の言葉が出る。私はそれに首を振った。
『見られてること自体は別にいいわ。ただ、ずっと何か言いたそうだったから、聞いたのよ』
 別府君の顔に浮かんだ表情を見れば、私の言ったことは図星だと分かった。
「いや。えー……っとさ。その……」
『ちょっと待って』
 私はある予感がして、彼の言葉を止めた。
『言いたいことは何となく分かったけど、私の方から先に言わせてもらえる?』
 上半身を彼の方に向け、私は真面目な顔つきでジッと見つめる。
「へ……? あ、いやその…… まあ、いいけど」
 答えが怖くて、聞くのをためらっていて、ようやく聞こうとする気持ちを固めかけた
ところで私に制された。そんなところなのだろう。だけど私からすれば、その質問はま
ず、私からするべきなのだ。
『別府君は……今日のデート。どうだったのかしら?』


続く