「猪血湯(ヂューシュエタン)」をご存じですか。日本でお目にかかることはまずないと思われますが、台湾や香港などでは人気の食べ物です。
初めて見ると、「赤い豆腐?レバー?レバーにしてはきれいに四角形に成形されているし、表面がつるんとしすぎている」と戸惑うでしょう。
この食べ物の正体は、豚の血に塩を入れて蒸して固めたもの。とてもシンプルな作り方だけに、血の新鮮さが命です。豚の血を食べる習慣のない日本では口に入れることが難しいのも当たり前ですね。

白いごはんの上に載せることもありますが、ポピュラーな食べ方はスープ仕立て。ネギやニラなどといっしょに透明なスープで食します。
「豚の血⁈」と、はなから抵抗感を覚える人も多いことでしょう。しかしフランス料理にも「ブーダン・ノワール」という、豚の血を使った名物ソーセージがあるように、世界のいろいろな国で豚の血は食材として使われているのです。さあ勇気を出して、トライ!

さて、肝心の味ですが、私の個人的な感想は「飛び上がるほどおいしいわけでもない。しかし予想される“食べにくさ”はまったくない」。
他の人に聞いても、「絶対に無理!」という意見もなければ「だからといって大好きというほどでもない」という、似たような感想が並びました。
よほどハズレのお店に入らなければ、血なまぐささに悩まされることもほぼなく、どんなゲテモノかと構えていると拍子抜けするほどです。
むしろあっさりしていて食べやすいのですが、想像力豊かな人は豚の血抜きを考えると食欲が失せてしまうかも。でも、食というものは、本来、肉を食べるのも血を取るのも同じことですよね。