アンパンマンとタッチでわくわくトレーニング 回避
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そうして、同じく市の中を流れるにしても、なお「海」という大きな神秘と、絶えず直接の交通を続けているためか、川と川とをつなぐ掘割の水のように暗くない。 しかもその動いてゆく先は、無始無終にわたる「永遠」の不可思議だという気がする。 吾妻橋、厩橋、両国橋の間、香油のような青い水が、大きな橋台の花崗石とれんがとをひたしてゆくうれしさは言うまでもない。 岸に近く、船宿の白い行灯をうつし、銀の葉うらを翻す柳をうつし、また水門にせかれては三味線の音のぬるむ昼すぎを、紅芙蓉の花になげきながら、気のよわい家鴨の羽にみだされて、人けのない廚の下を静かに光りながら流れるのも、 その重々しい水の色に言うべからざる温情を蔵していた。 たとえ、両国橋、新大橋、永代橋と、河口に近づくに従って、川の水は、著しく暖潮の深藍色を交えながら、騒音と煙塵とにみちた空気の下に、白くただれた目をぎらぎらとブリキのように反射して、 石炭を積んだ達磨船や白ペンキのはげた古風な汽船をものうげにゆすぶっているにしても、自然の呼吸と人間の呼吸とが落ち合って、いつの間にか融合した都会の水の色の暖かさは、容易に消えてしまうものではない。 ことに日暮れ、川の上に立ちこめる水蒸気と、しだいに暗くなる夕空の薄明りとは、この大川の水をして、ほとんど、比喩を絶した、微妙な色調を帯ばしめる。 自分はひとり、渡し船の舷に肘をついて、もう靄のおりかけた、薄暮の川の水面を、なんということもなく見渡しながら、その暗緑色の水のあなた、暗い家々の空に大きな赤い月の出を見て、思わず涙を流したのを、おそらく終世忘れることはできないであろう。 「すべての市は、その市に固有なにおいを持っている。 フロレンスのにおいは、イリスの白い花とほこりと靄と古の絵画のニスとのにおいである」(メレジュコウフスキイ)もし自分に「東京」のにおいを問う人があるならば、自分は大川の水のにおいと答えるのになんの躊躇もしないであろう。 大川の水の色、大川の水のひびきは、我が愛する「東京」の色であり、声でなければならない。 自分は大川あるがゆえに、「東京」を愛し、「東京」あるがゆえに、生活を愛するのである。 或秋の夜、僕は本郷の大学前の或古本屋を覗いて見た。 すると店先の陳列台に古い菊判の本が一冊、「大久保湖州著、家康と直弼、引ナシ金五十銭」と云ふ貼り札の帯をかけたまま、雑書の上に抛り出してあつた。 中は本の名の示す通り、徳川家康と井伊直弼とに関する史論を集めたものらしかつた。 僕はこの雑文の一つにかう云ふ名のあるのを発見した。 勝つ事ばかり知てまくる事をしらざれば害其身に至る。 負くる事に安んじて勝つ事を知らざれば損其身に至る。 この湖州大久保余所五郎なるものは征夷大将軍徳川家康と処世訓の長短を比べてゐる。 しかも彼の処世訓は不思議にも坊間に行はれる教科書の臭気を帯びてゐない。 何処か彼自身の面接した人生の息吹きを漂はせてゐる。 情熱に富んだ才人の面かげはかう云ふ一行にも見えるやうである。 「若し徂徠にして白石の如く史を究めたらんには、其の史眼は必ず白石の上に出づべし。 日本政記の論文にも、取るに足らざる浅薄の見多し。」 水戸黄門この書を思ひ立ちしは、伯夷伝を読みて感ずる所ありてなりといふ。 伯夷は時の強者を制し、名分を正さんとして用ゐられざりし男なり。 黄門何とてさる支那の一不平党に同感して、勤王の精神を現せる国史を編まんとはしけるぞ。 このスレッドは1000を超えました。
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