以下、月刊碁ワールド2017年11月号より

星合 世界電脳囲碁オープン戦に参戦した時は夢百合杯の時のバージョンに手を加えたん
ですか?
加藤 まず15・0から15・3にバージョンを上げました。今の囲碁AIはバリューネ
ットワーク(以下・VN)が……。
星合 VNとは?
加藤 失礼。VNとは、ある局面で黒から見た勝率がどのくらいかをはじき出してくれる
、ニューラルネットワーク(人間の神経細胞を模した情報処理システム)の一種でディー
プラーニングによつて作られます。これこそがアルファ碁がコンピュータ囲碁界に持ち込
んだ革命的手法なんです。
星合 アルファ碁や最近の囲碁AIの強さの秘密というわけですね。

加藤 もう少しVNを説明しましょう。ある局面があって、将来どちらが勝つかをシミュ
レーションします。つまり予測します。その予測をするためにポリシーネットワーク(以
下。PN)というものを使います。このPNがないとVNも作れないんです。
星合 …‥はい。
大橋 難しいところですけど、大切なところです。
加藤 ここからPNについて話します。まずディープラーニングとは機械学習の手法です
。細かいことは省きますが、簡単に言うと「人間の真似」をするのがとても上手くなるん
です。例えば一番有名なのは、ディープラーニングによってAIが動物や人間などの顔を
区別・認識できるようにさせたものでしょう。画像にはパンダであるとか、ゴリラである
とかを記した画像=ラベル付けと言われる=を何万、何十万と与えてディープラーニング
させると、その特徴を学習し、ゴリラやパンダの顔を、AIが人間の真似をして区別でき
るようになります。