アベノミクスはなぜ失敗したのか
日銀はなぜ2%インフレ達成に失敗したのか

デフレが日本の低成長の原因ではない。問題設定そのものが間違っていた。
大きな誤算。日銀は、大幅円安で輸出数量が増加し、生産拡大、雇用者所得の増加を想定していたが、
実質で30%もの大幅円安にもかかわらず、輸出数量はまったく増えなかったのである。
円安で輸入物価が上昇しても、雇用者所得の改善で相殺されれば、消費も回復するはず。
そう見込んだが、実際には、円安で輸出企業の利益が膨らむだけで、輸出数量はまったく増えず、
雇用者所得の増加も限られ、実質購買力が悪化した家計は消費を抑制した。
大幅円安にも関わらず輸出数量がまったく増えなかった理由はいくつかあるが、
底流には少子高齢化による人手不足がある。
2014年初頭には日本経済は完全雇用に入り、循環的にも人手不足が強まった。
従来、円安が進めば、現地通貨ベースでの価格を切り下げ、輸出数量を増やそうとしたが、
人手不足で増産が難しいため、輸出企業は現地価格を据え置き、数量増ではなく、利益率向上を図ったのである。
低成長でも人手不足となったのは、潜在成長率そのものがゼロ近傍まで低下したためである。

河野龍太郎 BNPパリバ証券株式会社経済調査本部長チーフエコノミスト