週刊エコノミスト 2018年8月28日号
唐突な外国人労働者受け入れ拡大 賃金目標に矛盾も ■横山 渉
http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/kokusai/1527245531/199-201n
 しかし、一方で、中長期的に見た場合、日本経済に与えるマイナスの影響を懸念する声も出ている。
 BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、「外国人労働者の所得が増えた分だけGDPが増えるのかといえば、
必ずしもそうとは限らないのでは」と指摘する。その根拠とするのが、移民研究の第一人者であるハーバード大学のジョージ・
ボージャス教授による研究だ。「移民が生産活動に参加することで増える米国民の富を『移民余剰』と呼ぶが、移民余剰は
年500億jにすぎない。移民も米国で家族を持って老いるので、社会保障サービスを利用する。そのプラスとマイナスを考えれば、
移民余剰はゼロに近いという」(河野氏)
 低賃金の外国人労働者が生むさらに大きな問題は、低スキル労働の賃金相場をさらに引き下げる可能性があることだ。
経済評論家の三橋貴明氏は、「技能実習生は最低賃金以下で働かされるケースが頻発している。日本人は今後、相対的に安い
賃金でも働く外国人と賃金切り下げ競争をさせられることになる」と警鐘を鳴らす。そのことは、日本の経済成長の押し下げ要因
にもなりかねないと説明する。
 日本は高度成長期、年率10%強の経済成長をしたのに対し、同時期のフランスやイタリアは5%程度だった。この差は彼らが
低賃金の移民を受け入れていたことに起因する。旧西ドイツも1950年から55年までの成長率は10%だったが、55年に移民を
受け入れ始めて以降は6%弱に急降下した。
     (中略)
 元々、第2次安倍政権は高齢者や子育て後の専業主婦の社会参加を推進してきたはずだ。それを一気に越えて外国人労働者
の受け入れを打ち出すのは唐突感が否めない。その裏には、「低賃金の労働者を獲得したい」という日本の財界の思惑が見え
隠れする。
 だが、外国人労働者の受け入れにより人手不足が解消されたら、賃金アップで人材を確保しようとする企業のインセンティブは
確実に失われる。これは労働者の賃金上昇を目指し、日本経団連や経済同友会などの経済団体にも賃上げを要請してきた
アベノミクスの趣旨とも矛盾する。