デービッド・アトキンソン――日本が成長できない本当の理由
https://hbol.jp/122527

アトキンソン:国民1人当たりのGDPのデータを見ればわかるように、先進国の中で、潜在能力に対して実力以上の力を
発揮できている一番の国がアメリカで、逆に、もっとも実力を発揮できていないのが日本です。国力ランキングを見ると、
日本は必ず上位に入りますが、それは実力があるからではありません。人口が多いからランク入りしているだけなのに、
それを実力があると勘違いしています。…(略)…経済のランキングではGDP総額が世界第3位ですが、先進国の労働者
1人当たりの生産性のデータを見ると、日本は27位ととても低い。…(略)…当たり前ですが、「GDP=人口×生産性」
であり、人口が増えないのであれば、生産性を上げる以外にないというシンプルなロジックなのに、それに専門家の
誰も気付いていないのが不思議でなりません。

――ただ、人口の問題をクリアすれば、経済成長を維持できるため、「将来的に移民をもっと受け入れるべき」という
意見もありますが。

アトキンソン:確かに移民政策が必要だ、という話はすでに財界から出ていますし、経済成長のために移民受け入れ
賛成の政治家もいるでしょう。通常の国であったらそのような選択も考えられます。しかし繰り返しになりますが、
日本の場合、まずは生産性の悪いシステム改善を目指して、男女の賃金ギャップを埋めることやワークシェアリングを
進めることで、十分経済成長が可能です。これらのことをせずに移民を迎え入れようとしているのは、構造分析が
まったくできていないからでしょう。今の日本が移民を受け入れたところで、上手くいくはずがないのです。制度自体
をポイント制にし、高学歴の移民は受け入れやすくするシステムもありますが、高学歴の外国人が日本で働くことに
なったら、非効率な今の仕組みそのものを変えようとするでしょう。今議論されているのは、低スキルの人を迎え入れ
て日本で一定期間働いてもらい、極論を言えば、日本人の年金と医療費を稼いでもらうといった都合のいい話です。
それは、奴隷制度と大して変わりません。