テレビの情報を鵜呑みに
ヒロユキは高校3年の時、合コンで出会った女の子の家に招かれたことがある。「この子、Hしたいのかな」と思い込んだヒロユキは、早速とばかりに彼女に迫った。ところが、強く拒否をされた。

「何なんだこの女、ふざけんなと。お前も家に呼ぶなよ、と思いました。テレビではお笑いタレントたちが『家で2人きりになったら、やらなきゃいけないっしょ』と、よく発言していたんですよ。そんなもんかな、と思っていたのに」

「家へ呼ぶ」手法は、女性を性交へ持ち込む王道として、誘い方マニュアルに君臨する。

中高生も目にするメディアで、「『部屋で映画を見よう』と誘え」「ベッドに座らせて一気に押し倒せ」「家に誘って何もないと、女のコもしらけちゃう」といった「指導」が乱れ飛ぶ。

だが現実には、「何もしないから」と言う相手を信用し、家へ行く女子も多い。逃げにくい密室の中で彼女たちは、望まない性行為の被害者となる。

もちろん、女子に嫌がられた時点で男子が迫るのを止めれば、悲劇は防げる。だが実際はそう簡単にいかない。

女性の「ノー」を信用できない
サトシは高校2年生の時、付き合い始めたばかりの女の子を家へ連れてきた。家へついてきたからには性交して構わないだろうと思い迫ったところ、「えー、やだ」と断られた。彼女の「ノー」を額面通り受け取っていいものかどうか、サトシは一瞬迷ったという。

「雑誌のマニュアルに『女性が嫌がるのはポーズ』と書いてあったんですよ。アダルトDVDだって、大体女性が嫌がっているところからスタートする。嫌がって、でも脱いだらそのうち乗り気になってくる、ってパターンが多いですから。だから彼女にノーと言われたときも、『これはいいのかな、行けるのかな』という考えが頭をよぎりました」

女性は口では「ノー」と言っても性交を望んでいる、最初は嫌がってもだんだん気持ちよくなってくる……。

こうしたストーリーは、アダルトDVDやマンガに非常に多い。男性が女性に強引に迫る口実ともなる。

メディアは、自分たちが無責任に発信する情報が青少年間のデートDVを引き起こしかねない現状を、深刻に受け止めなければならない。