十年前の思い出
エロ原稿中、誰かの息遣いを背後に感じた
振り向いても誰もいない、ペットは離れた場所で寝てる
気のせいかと思い、原稿再開
やはり、覗き込まれている感じがする
そして、長い髪が首筋に触れる感触が気持ち悪い
「気が散るやんけワレェ!!」
怒鳴りながら振り向いた
包丁を持った見知らぬ中年女がドアの前で硬直していた
ゴキブリが出た時と同等の絶叫しながら椅子を盾に女を押し出して鍵かけてKに電話
全身が震えて、家族が廊下に出てくる気配で家族が殺されたと思ってガチ泣きした
※死んでなかった
親父の浮気相手が、親父のカバンから鍵を盗んで乗り込んできたんだった
包丁は武器ではなく護身用だって言い訳してたが、意味不明
親父も向こうも五十代で家庭持ち、向こうの長男は大学生
外聞が悪いからって無罪放免で終わった
エロ本は発行停止して新刊はペラ本にした
NTRものだったんだ、きっともう二度と描けない
未完のNTR原稿が遺品にならなくてよかった
そして十年経つ今もなお、親父と包丁女はまだ付き合ってるらしいのが、自分にとってはシャレにならない怖い話だ
解けない謎は、息遣いとロン毛の感触は包丁女のものではない=じゃあ誰だった?って話だが、殺気を感じたとかそういうことだったんだと思ってる