「シュウVSボルゲ、もし斗わば」2

まさゑも、後方の丘から、コメ粒ほどの大きさのシュウを心配そうに見守る。
旧レジスタンス勢力系のまさゑたちの庇護者でもあるシュウが斃れたら、
後任は誰になるか分からない。
まさゑたちが丘に居るのも、聖帝軍の背後の異変報知器の役目でしかなく、
シュウ亡き後の運命に光が続くとは思われなかった。しかし………
今もボルゲ軍の将ディオの部隊に銃で制圧され、聖帝軍の定例以外の振り方で、
旗を振る事もできないでいるまさゑたちだが、シュウの姿をコメ粒ほどにでも、
眺めていれば、その瞬間もまさゑの心は光に溢れていた。
「銅鑼だ! 有意のリズムにだけはするなよ!」
前線ではシュウが急に、そう命じた。歩兵隊のすぐ後ろで、モヒ官が少し躊躇しながらも、
バチを振りかぶり、そして叩いた。瞬間、大音響。だが、それで終わりではなかった。
周りのモヒ官たちは鞘でも食糧袋でも何でもぶっつけて、途切れることなく、
銅鑼を打ち続ける。
五感と「気」で世界を識(し)るシュウと、異常聴覚に頼るボルゲ。
シュウの機転で、勝負は決した筈であった。
「なにぃぃぃ!!」
狼狽して叫んだのはしかし、シュウの方だった。
ボルゲの武器――多頭凶蛇棍――は、シュウの右脛に痛打を加え、
更に尖端がシュウの目前(?)に迫っていた。