「デュード、夕食ですよ〜!」
キッチンから翠星石の呼ぶ声がする。
「オーケー、ハニー。今行くよ!」
キッチンへ行くと、テーブルに並べられたご馳走が目に付く。
「おう、美味そうだなこれ!戴くぜ!」
フライドチキンのようなものをひょいとつまみ上げ、口の中に放り込む。
「へえ、なかなかいける」
「ふふ、翠星石がデュードのために腕によりをかけて作ったんですよ。」
翠星石は嬉しそうに入った。
「ああ、確かに・・・って、うげげおごごおあぁあぁぁっぇえ!!!」
するとデュードは、最初は味わっていたものの、いきなりその肉を吐き出した。
「どうしたですか!?」
「うげ!なんだよこれ!肉屋の得体の知れない肉使ってるじゃねえか!」
この町のお肉屋さんは人肉を売っているという噂だ。
当然、不味い。
「つうかお前、肉料理ばっかじゃねえか!どうせハビブの人肉使ってんだろ!さっさと捨てろ!」
「そんな・・・翠星石は一生懸命作ったのに・・・ひどいですぅ!」
翠星石は泣きながら、家を出て行った。
「おい!ハニー!待ってくれよ!」
デュードは必死に追いかけたが、暗闇の中に消えていく翠星石を捕まえることはできなかった。
「ママー!助けてー!」
奇声を上げてベッドから飛び起きたデュード。
「はあはあ、なんだ夢かよ・・・。ゾっとしたぜ。あいつが嫁なんて」
−畜生、この前出て行ったばかりの糞女房とあのメス人形がダブって見えるぜ。
「デュード、朝食ですよ〜!」
キッチンから翠星石が自分を呼ぶ声が聞こえる。
「って、おい、なんだよこのシチュエーションは」
それは夢と同じ光景であり、異なる点といえば時間が朝ということくらい。
ベッドから降りると、デザートイーグルを手に取り、キッチンへ向かう。
「うげ!マジかよ!」
テーブルには夢と同じ配列で肉料理が。
デュードはその内のフライドチキンのようなものを手に取り、千切って中身が何なのか確認した。
「どうしたのですか?」
「お前、この肉は何の肉か知ってるか?」
中身を翠星石に差し出して問う。
「冷蔵庫にあったお肉ですよ。何か変ですか?」
「大有りだよ。こいつは人肉だ!お前は俺に人の肉を食わせようとしたんだよ!ふざけんな!」
そう言ってデュードはテーブルの上に乗せられた食事をすべて掻き集めた。
「ああ!なにするつもりですか!」
「こんな気持ちの悪いもの食えるか!」
そして玄関から放り投げてしまった。
「ひどいですぅ!」
「うるせえ!糞不味いもの食わせようとすんな!中華料理屋の飯のほうがまだマシだぜ!」
翠星石は残飯のように捨てられた食事の方へ駆け寄る。
「翠星石がせっかく作ったのに・・・どうしてこんなひどいことを平気でできるのですか!」
「馬鹿かてめえは。クズが作ったものはどれだけ立派に見せようとクズなんだよ。しかも人肉ときてる。こいつぁ笑えるぜ、ッハッハッハ!」
「な、何がそんなに可笑しいのですかぁ!」
自らの好意を踏みにじられた翠星石は、涙ながらに反論した。