しかし実際は。試合が始まると、原田が接近するたびにファメションはクリンチで逃げる。
回を重ねてもその展開は変わらない。しかしいずれファメションは原田に掴まるだろう。
そう思えた。

 ところが予想に反して回が終盤になってもこの展開は変わらない。そろそろ客もしびれを
切らしてきた。原田、何をやってる、早く終わらせろ。しかし
問題のシーンがやってきた。原田はファメションのクリンチで単にパンチを塞がれていただけで
はなかった。クリンチをされるたびにストレスと疲労を重ねていた原田は攻めあぐんだまま、
ファメションの左2連発を食いダウン。立ち上がったが連打を浴びてロープの外に体半分飛び
出してしまった。そのままK.O。

 原田はファメションのクリンチにやられた、信じられない結果だったが、原田は必勝を
言われたこの試合に惨敗した後で引退してしまった。
 ファメションは原田を研究していた。あのスタイルが単純なファイターだということを。器用な
ボクサーではないということを。

 これはyoutubeで今もUPされているので視れる。ボクシングの深さを久しぶりに教えてくれた
試合だった。「私は映画をまだ知らない」は晩年の黒澤明が言った言葉だが、ボクシングは
まだ知られていない、が正解だろう。