「本日は、○○社夜行バスをご利用いただき、誠にありがとうございます」

バスが出発した。窓の外で、夜のネオン街がゆっくりと動き出す。
バスは思ったより空いていた。
私達の他には6組ほど。半分にも満たない。
次の停留所で乗るのだろうか。

「3列シートは初めて?結構広いでしょ」

落ち着きなく周りを見回していると、隣に座った男性が話しかけてくる。
彼の名は鈴村晃一。27歳のサラリーマンだ。
私と彼は恋人・・・という設定である。
そう、今夜だけは。