総評 ★★★★☆
牧野由依の1stアルバム。1stなのに、上に挙げたとおり異常な面子によるプロデュース。
そしてそのネームバリュー通りの、クオリティの高い楽曲群が揃っている。
有名アニメとのタイアップ効果もあって、最近の声優曲では例を見ない完成度と言える。
匹敵するのは菅野プロデュースの坂本真綾ぐらいじゃなかろうか。
全体としてフレーズ毎のつなぎを意識し上手く使っている印象がある。
中心となるARIA曲群2,5,6,9,13はどれも素晴らしい出来。
窪田ミナは作曲家としてだけでなく、アレンジャーとしての腕があることを再確認。
ROUND TABLE曲のシンプルかつ独特のメロディや、F.GIRAUD(何者?)の絶妙な旋律。
それぞれの個性がふんだんに発揮された曲だろう。

しかし何よりも予想外だったのが牧野由依の歌である。
正直なところ、メンツが豪華だから聞いてみようという気持ちだったのだが、驚いた。
まず単純に声が可愛い。これは田村ゆかりとか堀江由依とかとは違うタイプの可愛さであり、
数多くいる歌う声優の中でもオンリーワンのものだと思う。
基本声は細めなのに、声量もある。そのギャップがサビを強く印象づける。
高音は上品な声で、弦と調和する。坂本真綾に似た雰囲気もある。
それでいて、元々ピアニストであるというのも影響するのだろうが、表現力がある。
ピアノを弾くように丁寧に歌っているのを感じる。気の抜けた声、甘ったるい声、泣くような声。
ありとあらゆる歌い方を「知っている」ような印象を抱かせるのが凄い。
そして節々にある息の抜き方。これも声優ではオンリーワンな特徴だろう。曲調の関係もあるけど。
もし歌の上手い声優3人選べと言われたら牧野由依を選ぶ。それぐらい豊かな感情を見せる歌い方だ。
水樹奈々とか茅原実里も上手いんだけど、彼女らとは格の違う巧さを感じる。
ちなみに生(しかも弾き語り)でも相当高いクオリティで歌っていた。
歌える声優の中で若いのもポイントが高い。声優ソングの新たな道を切り開いてくれる気がする。
牧野由依は実力の割にマイナーすぎる。もっと広く知られ受け入れられるのを待っている。