総評 ★★★★
名盤。それぞれ作編曲が違うが、個性を出しながら意外とまとまっている。
シングル曲よりも、初収録曲の方が出来がいい。
言い方が正しいか分からないが、一般アーティストに近づいた。
安っぽい打ち込みの音が減り、あくまでも打ち込みは手段として使い、
アコースティックなアレンジが歌声を上手く響かせる。
それから、やはり真綾はこの音域だと再確認させたアルバムである。
トライアングラーは特殊だから別にしても、30minutes、さいごの果実、雨が降ると、
どうも音域が合っていない、良さが出せていない曲が多かった最近。
久々に低音とまでは言わずとも、裏声を使うことなく出る音域で勝負した曲が聞けた。

結構分析的に聞いてみて、過去とも比べて見て分かったのは、菅野楽曲の音域。
ベストを含めて6枚のアルバムの中で裏声を多用しているものが非常に少ない。
各アルバムの2曲あるかないか、それも坂本真綾育成のモデルとして作ったようなもの。
菅野が、どうしたら坂本真綾の魅力を伝えられるかいつも考えている、と言っていたが
このあたりがその現れなのだろう。もちろん付きっきりだからこそ出来たのだが。
前述の通り真綾の裏声はあくまで装飾音的な使い方が美しい。
そういう意味でここ最近のシングルの高音域は異例とも言える状況だったのかもしれない。

菅野脱却を果たしながら、菅野回帰を同時に果たしたというアルバム。
トライアングラーをのぞけば、良い意味でも、悪い意味でも、ドゲは一切ない。