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押井守監督の「勝つために見る映画」
全国の課長さん、あなたに「最後まで逃げない部下」はいますか?
「機動警察パトレイバー2」(1993年 押井守監督)【承前】
https://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20121130/240348/

押井:敏ちゃんほど人をいいように使った男はいないからね。テーマを持っている人間は、テーマがない人間を好きに使っていいんだという考えだから。
−−「頭上の敵機」の回(「テーマがある人は、テーマなき人をどう使ってもいい」)もそういう話がありましたね。
押井:本人が常日頃からそう言ってるんです。「あいつらは、放っておいたらテーマがないんだもん。俺はテーマがあるんだから、あいつらにテーマを
与えてやって自由自在に使ってどこが悪い」って。
−−利用して申し訳ないどころか、利用してやったんだから感謝してほしいぐらいのニュアンスですね。
押井:敏ちゃんが面白いのは、テーマを映画の中味に置いてないところだよ。彼はプロデューサーだから「作品」というテーマを持ってない。
彼にとっての絶対的なテーマは「動員」。作品の善し悪しは二の次なんだよ。
 「イノセンス」で組んだときにはっきりわかった。自分自身の趣味、好みの映画を作るためには仕事してないんです。プロデューサーだから興行として
成功することがテーマであって、それ以外にはない。
 でも、その中で監督を通してと、いうか監督をだまして、コントロールして、自分の言いたいことも時々言っちゃおうとしてるんです。だからジブリの
映画の何本かは、実は「鈴木敏夫映画」だからね。僕に言わせれば「魔女の宅急便」はその典型だよ。あれは宮さん(宮崎駿)の映画じゃないもん。
−−そのあたりもいずれじっくりうかがいたいです。

押井:鈴木敏夫という人間は、たぶんかつては徳間康快さん(故人・徳間書店初代社長。スタジオジブリの社長でもあった)に同じように扱われたんだと
思うよ。そういうやり方を見てきたからこそ、今、同じ事をやれてるんです。昔の人間、戦後のオヤジたちというのは実はみんな同じ構造で生きてきたんです。
 自分のテーマをどうやって実現するか、そのために誰が利用できて、誰をどう動かすのか、そのために何をするのか。テーマを与えなければ人は動かないし、
そうするように追い込まなければ誰も動かない。あるいは、退路をあらかじめ潰さなかったら誰もやらない。
(続く)