B級より面白いと言うから観てきたが,はっきり言って期待はずれだった。

全体として対象年齢下げすぎ。劇場版クレしんってのはシリアスな内容をしんのすけフィルターを通した世界を描写したもの。
だから前提としては,凶悪な組織が割とマジなことを非道な手段を通してやってる。これを5才児フィルターでふざけた組織名だったり,手段のプロセスが馬鹿げていたりってことになる。

それはつまり5才児フィルターで理解しきれないものを置き換えているに過ぎず,本質はやっぱり凶悪で非道に大人同士は本当に戦争やってる。
だからこそこれまで大人の干渉にモ耐えてきた。

それが今作は対象年齢を下げすぎて,本質の部分まで侵してしまっている。少なくとも小学校低学年以上は確実に切り捨ててる。
ネーミングにセンスが感じられないし,舞台スケールも歴代最小クラス。悪役も単なる舞台装置に過ぎないのは掘り下げがないこと,EDに「その後」がないことからも明らか。

無駄に媚びようと途中から「正義とは?平和とは?」なんてお題目を掲げるために,奥義関連はサーッと流すという暴挙。
挙げ句,尺のバランスとそのプロセスが練られていないために,問題を理由なく解決して曖昧に終わってしまった。

普遍のテーマに道筋をつけ,それをさらに5才児フィルターに変換することが劇しんにおける腕の見せどころではなかったのか。

通してみれば体感的に黒パンダと正義・平和の尺は7:3だが,前半で掘り下たのがせいぜいマサオの嫉妬を煽る程度なのでいかに無駄なシーンが多いか分かるだろう。
恐らくは後半のラン暴走の原因でもあるだろう「捨て子設定」が,前半でなにも補足がないのは最早物語としての欠陥と言っていい。

目玉のアクション自体もさほどシーンが多いわけでもなく,あっても旧作で当然にやっていたカスカベ防衛隊の身体技能を再描写しただけ。
まさか「技」までもが使いまわしとはただ呆れるしかなかった。

元々アクション要素が強い劇しんにおいてアクション自体をテーマにするのは自殺行為であったといえばそれまで。
それでもと劇中のような上っ面ではなく,武を修める意味,それでも自分が戦う理由への解答を提示してくれると期待してみればこの様だ。

いくらでも掘り下げる要素,テーマをひっくり返す意外性,スケールを逆手に取ったパニック。調理法さえ間違わなければ名作になり得ただろうに。残念と言う他ない。

総評,スパイ作戦とどっこい。ユメミーには遠く及ばない。まして前々年のサボテンとは比較すること自体が無礼というものだ。