「聖闘士星矢 天界編 序奏」を観る。原作車田正美、監督山内重保。83分。原作は大昔に多少読んだ。
画面に相当の力がある。プロローグということだし、それ以上どうこう語る段階ではないだろう。
アテナとアルテミス、二柱の女神の瞳が異様に大きく鋭く描けているのはアイデア賞かもな。
美しさと異形さが同時に醸し出せているから。



「プリキュアオールスターズ みんなで歌う奇跡の魔法!」を観る。
土田豊監督。全プリキュアシリーズとも、劇場版以外は完全に未読。
なんか中途半端にミュージカル要素が混じってたけど、制作難易度高いから避けておいたほうが無難だったと思う。
成功してた部分もなくはなかったけど。まあ、そこ以外にも素直に笑える箇所が多少あったから良しとする。



「劇場版ヒーリングっど・プリキュア」を観る。68分。脚本金月龍之介とは、エロゲー界隈で見知った名前だな。
監督中村亮介。シナリオの全貌は特典の副音声を聞かないとわからないらしいが、レンタルには同梱されてない。
だからシナリオ評価は控えるけど、ラスボスの動機とかが甘い気がする。
まあおおむねきちんと魅力的に仕上がってはいる。アクションが結構いい。
34分20秒前後、小児がこっそりドアの隙間から大人たちの秘密をのぞいてしまう描写は、
子供のことを良く知っている作り手なんだろう。俺も昔よくやったし。
おまけの掌編アニメも良く出来てて楽しかった。



「映画プリキュア ミラクルリープ みんなとの不思議な1日」を観る。72分。ループもの。脚本村山功、
キャラデザ作画監督板岡錦、監督深澤敏則。テレビ版はすべて未読だが当シリーズの劇場版は既読。
多少のネタバレあり。「地球をお手当て♪」とかドヤってるわりにコロナに完堕ちしたプリキュア、
という軽口を事前に耳にしていたが、相当に目を見張る出来だ。

冒頭部の二冊の月刊プー(プリパラ由来かよ)が、2020年3月号と9月号なのがまず笑えた。延期ネタか。
17分43秒時点、プリキュア三人組が妖精たちの悲鳴を耳にしたとき、
一番活発そうな娘がほんの少し早く立ち上がるシーンは、作り手がキャラをきちんと把握している。
(さらにいえば、同じシーンで顔だけ上げる少女と身体ごと振り向く少女の違いや、
 鉛筆をほうり投げる少女と机に置く少女の違いも、描き分けている)
水たまりで濡れたのが、初回は両足で二回目は片足(三回目は濡れず)な点も繊細だ。
ラスボスがゲスト精霊を捕獲する際に、素手で凶暴につかんだりせず、
エナジーボールに閉じ込めて捕獲するあたりも同じくだ。最後に改心する系ラスボスへの配慮だな。
72分の短さでループものを幼児にのみこませるだけのシナリオの技法も、適切に使いこなせている。
「ミラクルンは『明日』をつかさどる精霊、リフレインは過ぎ去った時間『昨日』をつかさどる精霊だよ」
またラスボスの「これで最後の闘いにしましょう」とかな。
おそらく2016年の君縄のブレイクを受けて、プリキュアでもループ物をやろうかって機運が湧いたのだろうが、
テレビアニメ制作と平行して年二本も劇場版を作る、という無謀な条件下では、これ以上望めない完成度だ。

作品の傷はかなり精密なチェックでないと発見できない。たとえばピンク同士が鉢合わせして転んだとき、
ふたりの膝こぞうが剥き出しになるシーンふたつは、『雪の女王』でパヤオが愛した盗賊の娘にやや及んでない、とか。
いままでピンクたちの私服姿がこう出張る劇場版って、ほとんど無かったはずだし、
この脚本家なら、その新奇性の上手な活かし方を模索できる力量もそなえていそうで、
現に複数の正座シーンや少年を諭すシーンの作り方を見ると、そのあたり意識してる気もするけどね。
またその直前のシーンの、水たまりで濡れた女子中学生のソックスに包まれた足首の描き方も甘い。

まあそれらは意地悪な観方だ。このご時世に作り手たちはお疲れ様。
あと美術にも志を感じる。14分40秒、田舎ではありがちなああいう廃屋をこの手の作品で垣間見せるのは初体験だ。