カタギになって一週間後。私は知り合いの社長に頼み、人生で絶対やることはないだろうと考えていた現場仕事に出ていた。
「沖田さ〜んっ!休憩してくだ〜さいっ!」
 私は「は〜いっ!」と答え、作業の手を止め、首に巻いていたタオルで額の汗を拭った。
 ここから始めよう。先のことなんてどうなるか分からないけど、ここから始めよう。そう思いながら、ポケットからタバコを抜き出し、咥えたタバコに火をつけた。
「悪ないやんけっ」

悪ないよ悪ないっほんまに悪ない
確かに悪ない
ほな、なんで現場仕事しとるって胸張って言わんねやろ
そこが見苦しいほど悪すぎるやろがい
自分で頼み込んでさせて貰った現場仕事やろう
誇り持って働かなああかんと思うよ