今、大きな円窓から梅の木を見ている。
枝に積もった年明けの雪が、陽射しの下で解けようとしている。
冷たい重荷に耐えた幼い枝が、いっときの安堵を味わっているようだ。

それは我が、こうして徒然に筆を執ることで、僅かながら仮初めの安寧を感じているのと、
よく似ている。
さりながら降り積もった雪が枝をしならせ、ついにはひとかたまりとなって落ちるように、
我はこうして胸中の重みを、言葉に変えて書き綴っているのである。

いずれ解けてなくなる雪のように、これらの言葉もまたガリューの心中には残されず消え去るかどうかはわからない。
少なくとも、わざわざ文章として守るようガリューに命じるつもりもない。
あくまで時の流れと共に、彼自身の心中に預け渡すべきものなのだろう。

著述家を夢みている彼に、我の才能のほんの一片を見せつけることで、その可能性を無にしたことが、
本当に正しかったどうかは世間に回答を任せるほかあるまい。

我は、あの男の夢ごと、そのくだらぬ理念を葬ることに決めた。