【「山口組三国志」のこれから】
週刊現代12月2日号(1)

〈天の時、地の利、人の和〉

「山口組三国志」と言った場合、おおかたの興味は最終的に勝つのはどこの誰か、だろう。
山口組の主流であり、今のところ最大勢力の「六代目山口組(司忍組長、高山清司若頭、主戦力は名古屋の弘道会)」が勝ち残るのか。
それとも「造反有理」を実践して六代目山口組を脱退、分裂して一派を形成した
「神戸山口組(井上邦雄組長、主戦力は神戸の山健組)」が本家本元を食うことになるのか。
あるいはまた井上邦雄組長がやっていることは弘道会路線以下と批判、神戸山口組から袂を分かって新路線に踏み出した
「任侠山口組(織田絆誠代表、主戦力は織田一門)」が最終勝者になるのか。
戦に勝つためには昔から天の時、地の利、人の和が大切といわれる。
天の時という点では三団体とも同じだろう。暴力団対策法や暴力団排除条例、各業界の暴力団排除要項などにがんじがらめにされ、
しかも微罪でも逮捕、不起訴上等という警察の集中取り締まりを受けている点では三団体とも共通している。
逆にいえば、今は最も戦いに適さない時期かもしれない。そうした中、三団体とも生き残りをかけて苦闘を続けている。
さらにいえば、全体的に逆境にあるからこそ、組を飛び出て戦わざるを得ないハメになったともいえる。
今回の分裂、対立はヤクザの損得問題ではなく、死活問題に関わっている。
地の利という点でも三団体はほぼ同じ条件にある。
三団体にはそれぞれ中心的な活動地域があるが、三団体とも傘下に二次団体、三次団体を置いて、勢力は全国に及んでいる。
名古屋が例外的に好況とか、神戸が震災の傷手を回復しきれず地盤沈下とか、
任侠山口組がほぼ独占的に地歩を占める大阪がインバウンド景気で上向きとか、そのような特殊事情はない。
全国おしなべてアベノミクスの滴りなど受けていないし、愛知県警や兵庫県警、大阪府警が三団体のうち、
どの団体に甘いとか、そのようなことはないと信じたい。