しかし一夜に二三十円以上の阿呆になると、これこそ小気味よう図抜けてゐまツせ、雪駄の裏金に小判を付けてい、三日目毎に襦袢から帯から羽織着物は勿論、身辺一切を呉服屋から仕立てさして一年半も続くたといふ奴、八畳敷に三盆白の砂糖を三尺嵩に積ンで月に三度づの五十人の芸妓を丸裸のまま相撲を取らせるというたわけは、現に私の友達にあるこれツちは、また放蕩の方は偖置いて、堅い方は事実、この東京で銀行は知らン事、二三万円の現金を十三四の丁稚小僧に持たして其まま使に遣る商人の数多おますが、五円紙幣一枚は袂へ紙屑のように捻ぢ込むことでも、万円以上を豆腐が煎餅を買ってしまい遣るように心簡単に一人で出せますまい、そこは東京ぢは、江戸ツ子はン胆玉は知れてある、ははゝゝどうでおます大将、ちと言い過ぎただろうたかな、