前作の3分ポッキリはダラダラとした展開を指摘されましたが、本作は結構のめり
込んで観れます。プロローグのよしなが先生の絶叫から恐怖をあお
り、前半は主に風間君の視点でそっくり人間の侵食を描いていま
す。その中でも風間ママの台所シーンが強烈で、お子様は軽くトラ
ウマになるんじゃと思うくらいやり過ぎちゃったでしょうか。唯この場面大きな問題があるん
ですが、それについては後述します。中盤は野原一家がジャッキー
と合流しての脱出劇です。ここではなんといってもミッチー&ヨシ
リン。まあ元々キモいキャラ達なんですが、今回はさらにキモ恐いで
す。また春日部市がほぼ敵の手中に落ちており、絶望的な状況とい
う閉塞感が襲います。

ここまでは順調にきています。やや恐怖描写に走りすぎてる嫌いは
ありますが、観客に「この後どうなるんだろう?」と思わせるには
十分な展開です。しかしキャストはちょっと不安になってました。
これ、上手くまとめるには相当の力量がいるぞ。

不安的中。前年の悪夢再びのグダグダクライマックスです。なんの
盛り上がりかもわかりにくくひたすら続くサンバシーン。これを観て喜ぶ人間
は、子供から大人まで含めてどの辺にいるのかさっぱり分かりませ
ん。薬品を手や尻に塗ってコンニャクローンを倒す一連のシーンは
それなりの爽快さを持ってますが、
グダグダです。アミーゴ・スズキを倒すのと
直接つながってると言いにくいことも盛り上がりに欠ける一因です。

何より問題なのは、話の大枠としてアミーゴ・スズキの目的が不明
瞭なこと。敵の行動に意味付けが出来るかわからず、それに呼応するジャッキ
ーのサンバも必定良く分かりにくいものになってしまっています。結
果として映画全体の説得力が失われてしまいました。問題は他にも
あり、前述した風間ママの怪物化等含めて、設定が実にいい加減で
す。怪物化には理由も必然性も薄かったようで、こんな適当な展開
がよく許されるなって感じです。ニセのよしなが先生やアイちゃん
が優しい人になるのもどういう理屈なんだろう?

以前『3分ポッキリ』について『3分ポッキリ』はストーリーを子供向けにしたために『3分ポッキリ』はストーリーが進むごとにクオリティがだんだん落ちた、
と思ったことがありましたが、どうもこれは違ったようです。ムト
ウ監督の履歴を見ると、むしろ内輪受け度の強いオタクネタが本領
のように思われます。『3分ポッキリ』でいえばプリティミサエスとかの部
分ですね。細かい描写に力点がある。その一方で90分間の映画を構
築する演出能力については疑問符をつけざるを得ません。オタクネ
タについてもどうも中途半端で、ツンデレジャージもただ出しただ
け。「な、なによ!別にあんたのために〜」位はあるかと思ったん
ですが。まだ長州小力の方がインパクトがありました。

『伝説を呼ぶ踊れ!アミーゴ!』は中盤を観ると、『伝説を呼ぶ踊れ!アミーゴ!』のクレしん世界はまだパワーを失っているとは言いにくいで
す。あとはそれをどう表現するかです。ムトウ監督が優れたアニメ
作家だとしても、人には向き不向きがあります。「映画」クレヨン
しんちゃんとは馴染まないと思いますね。あと、クレヨン
しんちゃんのアニメを国民的アニメにこだわ
る必要も薄いんじゃ・・・(これは商業的な理由でしょうが)。

余談ですが、『伝説を呼ぶ踊れ!アミーゴ!』を観に行った日にオマケのサンバホイッスルは貰えませんでした(中学
生以下限定らしい)。
「ふんだ!別にそんなの欲しくなんかなかったんだからねっ!」

(シアター大都会)